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バックオフィス自動化 / AI活用

勤怠の請求転記を1社4時間から30分にしたOCR自動化

2026.10.21 約2,700字 読了 4分 yamamo3

月末、取引先から届いたシフト表に定規を当て、一行ずつ数字を拾って請求書に打ち込む。人数の多い会社ほど行がずれ、隣の人の数字を拾ってしまう。勤怠の転記は、時間がかかるうえに、間違えると請求額がそのまま狂う作業です。

この記事では、筆者が派遣先5社の勤怠PDFをAIで読み取り、自動で転記する仕組みを紹介します。1社約4時間の作業が約30分になった経緯と、自社で始める手順もまとめました。

この記事の結論

転記ミスの原因は注意力ではなく「行を目で追う作業」にある

勤怠の転記ミスは、担当者の不注意ではなく、表を目で追うという作業の形から生まれます。

筆者の業務は、派遣スタッフの勤務実績をもとに、派遣先へ出す請求書を作る仕事です。請求書は各社とも、1枚目がスタッフごとの勤務のまとめ、2枚目以降がスタッフごとの勤怠明細という構成です。

自動化する前の手順は次のとおりでした。

  1. 請求用のExcelを開き、シフト表から勤務予定を入力する
  2. タイムカードから始業・終業の時刻を入力する
  3. スタッフごとに、合計勤務時間・残業時間・深夜勤務時間・休日勤務時間を出す
  4. 請求書とタイムカードを突き合わせ、1枚目の数字に誤りがないか確かめる

人数が多い表ほど行ずれが起きる

ミスが集中したのは、スタッフの多い会社のシフト表でした。1行に1人、横に1か月分の日付が並ぶ表では、目が少し滑るだけで別の人の行を読んでしまいます。

筆者は定規を当てながら作業していました。それでも行ずれは防ぎきれません。注意を強めるほど時間がかかり、時間をかけるほど集中が切れる、という悪循環でした。

書式が会社ごとに違うと手順が増える

もう一つの原因は書式の違いです。タイムカードは全社で同じ形式ですが、シフト表は会社ごとにばらばらでした。シフトは時刻ではなく記号で書かれており、記号を予定勤務時間に置き換える作業も必要です。

会社が変わるたびに読み方を切り替えるため、慣れた人でないと進みません。作業が特定の担当者に偏る原因にもなっていました。

読み取りはGemini、計算はExcel、人は確認だけに分けた

筆者は、勤怠PDFの「読む・計算する・確かめる」を道具ごとに分け、人の作業を最後の確認だけにしました。

PDFをフォルダに置くと自動で動く

仕組みはシンプルです。読み取り専用のフォルダを用意し、そこにPDFが入ると処理が始まります。処理の流れはGAS(Google Apps Script:Googleのサービスを自動で動かす仕組み)で組みました。

担当 やること
Gemini(GoogleのAI) シフト表・タイムカードのPDFを読み取り、文字と数字のデータにする
請求用Excel 勤務予定と始業・終業時刻から、勤務時間を関数で自動計算する
検証 合計勤務時間・残業時間・休日出勤を確かめ、不明な箇所を赤字にする
人 赤字の箇所と、数字におかしな点がないかを確認する

シフト表は記号から予定勤務時間を、タイムカードは始業・終業の時刻を読み取ります。書式が1社だけ違う会社も、Excel関数で計算をそろえ、ほかの会社と同じ形で結果が出るようにしました。

最大の壁は「表の崩れ」だった

いちばん時間がかかったのは、表の崩れによる読み違いです。罫線がずれていたり、行が詰まっていたりすると、AIも人と同じように隣の行の数字を拾います。

この調整に多くの時間を使いました。最終的には、読み取りを完璧にすることをやめ、自信のない箇所を赤字で知らせる形にしました。AIに全部を任せず、怪しい箇所を人に渡す設計です。

1社約4時間が約30分になった

効果は数字に表れました。以前は1社あたり約4時間かかっていた作業が、確認だけの約30分になりました。5社を合わせると、毎月の作業が約20時間から約2時間30分になった計算です。

項目 導入前 導入後
1社あたりの作業時間 約4時間 約30分
5社合計(毎月) 約20時間 約2時間30分
人の作業 入力・計算・突き合わせ 数字の確認

転記ミスも、筆者の職場ではほとんど出なくなりました。もう一つの変化は、タイムカードを毎日送ってくる会社について、1週間ごとに先回りして確認できるようになったことです。月末にまとめて抱えていた作業が分散し、時間に余裕が生まれました。

自社で始めるなら、1社に絞って1か月回す

勤怠の自動転記は、最初の1社で型を作り、1か月確かめてから広げるのが近道です。

筆者の場合、最初の1社を確立するまでに1か月かかりました。その1社を1か月運用して最終確認をしたあと、2社目以降は1社あたり約1週間で導入できています。最初の1社に時間をかけたことが、横展開の速さにつながりました。

STEP1:1社に絞る
スタッフ数が多く、ミスの起きやすい会社を1社選びます。効果が見えやすく、社内の理解も得やすくなります。

STEP2:記号と書式を表にする
シフト記号ごとの始業・終業・休憩を一覧にします。AIに読ませる前に、人が書式のルールを言葉にしておく作業です。

STEP3:1か月確かめてから広げる
自動の結果と、これまでの手作業の結果を1か月並べて確かめます。赤字の出方に納得できたら、次の会社へ広げます。

FAQ

プログラミングの専門知識は必要ですか

筆者の場合、GASの部分はAIに任せて組み立てたので、プログラミングで苦労はしませんでした。必要なのは、書式や記号のルールを言葉にする作業のほうです。

OCRの読み取りはどこまで正確ですか

表の崩れがあると読み違いが起きます。そのため、自信のない箇所を赤字にして人が確かめる設計にしています。

取引先ごとに書式がばらばらでも使えますか

使えます。シフト記号の対応表を会社ごとに用意し、書式の違う会社はExcel関数で計算をそろえます。

導入までどれくらいかかりますか

筆者の場合、最初の1社に1か月、2社目以降は1社あたり約1週間でした。最初の1社は、さらに1か月運用して確かめています。

人の確認は本当に必要ですか

必要です。最後に人が数字を確かめるからこそ、読み違いのある表でも安心して請求書を出せます。

まとめ――明日やること

注釈・出典

  1. 本文の数字は、すべて筆者の職場での実績値(派遣先5社・毎月の請求作業)です。外部の統計は使用していません。